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ピロリ菌の除菌について

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)とは?

 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、胃の粘膜に炎症を起こし、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、そして、胃がんの原因となることがわかっています。感染率は、30歳未満の若年の方で10%くらいと低率ですが、壮年から高齢の方では、60%以上と高率です。
 ピロリ菌の除菌により、関連する病気の改善や予防が期待できます。胃がんについては発生率が1/3に抑制されたという報告があります。


胃粘膜表面粘液内に多数のピロリ菌が認められます
(内視鏡による胃生検材料、強拡大顕微鏡画像、ギムザ染色、村上記念病院病理診断科)

ピロリ菌と主な病気

ピロリ菌が引き起こす主な病気としては、以下のものがあります。

■慢性胃炎
 ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると炎症が起こります。感染が長く続くと、胃粘膜の感染部位が広がり、最終的には慢性胃炎となります。この慢性胃炎をヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と呼びます。
 ヘリコバクター・ピロリ感染が胃潰瘍・十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎等を引き起こし、その一部が胃がんに進行してしまいます。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、ピロリ菌の除菌療法が成功すると改善します。

■胃潰瘍・十二指腸潰瘍
 胃潰瘍・十二指腸潰瘍患者のピロリ菌感染率は90%以上といわれ、一度よくなっても半数以上が再発し、薬をなかなかやめることができません。しかし、除菌療法でピロリ菌を除菌すると、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の多くの患者さんにおいて、再発率が減少しています。

■胃がんとピロリ菌の関係
 ピロリ菌の感染者全員が必ずしも胃がんになるわけではありませんが、ピロリ菌感染による慢性胃炎が長く続くと、萎縮性胃炎や、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化器の疾患が発症する可能性が高くなります。さらに、一部の患者では、萎縮性胃炎が続いた後、胃がんになることも報告されています。
 ピロリ菌の除菌により胃がんの発生率が1/3に抑制され、除菌が胃がんに予防効果があることが確認されています。

ピロリ菌の除菌の前に

 ピロリ菌の除菌療法を始めるまえに、まずは除菌療法の対象となる病気があるか確かめます。内視鏡検査または造影検査で胃潰瘍または十二指腸潰瘍と診断されたり、内視鏡検査で胃炎と診断されてから、検査でピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。

ピロリ菌除菌療法の対象となる人は、次のI〜Vの病気の患者です。

(T)内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者
(U)胃MALTリンパ腫の患者
(V)特発性血小板減少性紫斑病の患者
(W)早期胃がんに対する内視鏡的治療後の患者
(X)内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者

これらの病気でない人が除菌を希望する場合は、医師と相談してください。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。

(1)内視鏡を使わない方法
 @尿素呼気試験法
  診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。
  簡単に行える方法で、感染診断前と除菌療法後4週以降の除菌判定検査に推奨されています。
 A抗体測定
  ピロリ菌に感染すると、抵抗力として菌に対する抗体をつくります。血液中や尿中などに存在する
  この抗体の有無を調べる方法です。血液や尿などを用いて、その抗体を測定します。
 B糞便中抗原測定
  糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。

(2)内視鏡を使う方法
 @培養法
  胃の粘膜を採取してすりつぶし、それをピロリ菌の発育環境下で5〜7日培養して判定します。
 A迅速ウレアーゼ試験
  ピロリ菌が持っているウレアーゼという、尿素を分解する酵素の活性を利用して調べる方法です。
  採取した粘膜を特殊な反応液に添加し、反応液の色の変化でピロリ菌の有無を判定します。
 B組織鏡検法
  胃の粘膜の組織標本に特殊な染色をしてピロリ菌を顕微鏡で探す組織診断方法です。

ピロリ菌の除菌療法

 ピロリ菌の除菌療法は、「胃酸の分泌を抑えて抗生物質の効果を高める薬」、「様々な細菌の発育を抑える薬」、「ピロリ菌に対しての抗菌作用を高める薬」の3種類を7日間服用する治療法です。確実にピロリ菌を除菌するために、指示された薬は必ず服用するようにしてください。正しく薬を服用すれば、1回目の除菌療法の成功率は8割程度といわれています。
 すべての除菌療法が終了した後、4週間以上経過してから、ピロリ菌を除菌できたかどうかの検査を行います。この検査でピロリ菌が残っていなければ、除菌成功です。

除菌療法の注意点

 1回目の除菌療法でピロリ菌が除菌できなかった場合は、初回とは別の薬に変えて、再び除菌療法を行います。この方法で行うと2回目の除菌療法は9割越える確率で成功するといわれています。