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睡眠時無呼吸症候群について

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

 睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、眠り出すと呼吸が止まってしまう病気です。睡眠中に舌が喉の奥に沈下することにより気道(空気の通り道)が塞がれ、そのため、大きないびきをかき、睡眠中に呼吸が止まったり、止まりかけたりする状態が断続的に繰り返されます。
 呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、眠り出すとまた呼吸が止まってしまいます。

 これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出現します。 ひどいイビキ、睡眠中の呼吸停止がある場合には検査・治療を受けることが大切です。


睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関連する症状

睡眠時無呼吸症候群(SAS)には、主に次のような症状が見られます。

 @ 夜間の症状 :睡眠中に呼吸が止まる、大きないびき、不眠、
   頻繁にトイレに立つ(頻繁に目が覚める)
 A 昼間の症状 :熟睡感がない、朝の頭痛、日中の強い眠気、
   集中力の低下
 B 他の症状 :勃起機能不全(ED)
 C 身体的特徴 :肥満

 ⇒自己診断テスト

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の合併症

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)になると、血液中の酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、高血圧となります。酸素濃度の低下により動脈硬化も進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。さらに睡眠不足によるストレスにより、血糖値やコレステロール値が高くなり、さまざまな生活習慣病やメタボリック・シンドロームがひきおこされます。
 1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心筋梗塞・脳梗塞・生活習慣病・眠気による事故などを引き起こし、死亡率が非常に高くなるため、すぐに治療が必要です。

検査について

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる場合には、重症度や原因を判定し、治療方法を決定するための検査が必要になります。

■スクリーニング検査(簡易検査)
 スクリーニング検査とは、SASの早期発見を目的に、より多くの人を対象として確定診断のための精密検査が必要かどうかを判断するために行う簡単な検査です。
スクリーニング検査で使用する機器は、小型で軽量であるため、自宅に持ち帰って普段どおりの生活の中で検査を行うことができます。検査結果により、より詳しい検査が必要な場合は、PSG検査を行う場合もあります。

■PSG検査(睡眠ポリグラフ検査)
 スクリーニング検査でSASの確定診断のための精密検査が必要と判断された場合に、1泊入院でPSG検査を行います。PSG検査は、睡眠状態を総合的に評価する検査です。
簡易検査の項目に加え、脳波や筋肉・眼球の動き、心電図などを測定することで、睡眠の深さ、あるいは覚醒反応の有無を呼吸状態の詳細とあわせて数値で評価します。取り付けるセンサー類はたくさんありますが、痛みを伴うものはありません。

治療法について 

(1)睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法
 SASの治療は、睡眠時の上気道(喉の奥)の空気の通りを良くすることで、睡眠中の呼吸停止を防ぐものです。これにより、睡眠の質が改善され、日中の眠気などの症状を改善します。
 中等度〜重度のSAS患者には、CPAP(シーパップ/経鼻持続陽圧呼吸療法)という治療法がよく用いられます。これは、睡眠中に鼻にマスクをつけ、空気を持続的に送り込むことで喉の奥を押し広げて無呼吸を防ぐ治療です。


 また、適応補助換気療法(ASV:Adaptive Servo Ventilation)と呼ばれる呼吸療法もあります。呼吸器疾患の方はもちろん、慢性心不全などに対する有効性も広く実証されています。ASV療法は、上記のCPAPのさらに上級グレードといった位置づけです。中枢性の無呼吸があるタイプの場合、CPAPだけでは不十分なケースがありますが、このASV療法であればそれにも対応する事ができます。
 中枢性の無呼吸は、心臓のコンディションの悪い方に見られるケースが多く、その鑑別をきちんと行い、適切な治療選択をする事が重要です。

(2)日常生活上注意すべき点
 多くのSAS患者では、肥満によって喉の奥が狭くなっているので、上記の治療法とともに減量に取り組むことが重要です。また、喫煙や過度の飲酒もSASを悪化させるので適正飲酒、禁煙に取り組むことも効果的です。

(3)SASの治療効果
 効果的な治療により、睡眠中の呼吸停止が起こらなくなり、睡眠の質も改善し、日中の眠気や居眠りがなくなります。SASが原因となる漫然運転や居眠り運転等による事故防止にもつながります。SAS患者の交通事故率は、CPAPによる継続的な治療を行った場合、大幅に低下し、健康な人と変わらなくなるという報告もあります。