腎臓内科

 腎臓の大きな働きとしては、体内の老廃物を尿として排泄させることが知られていますが、実は体の恒常性を保つために、それ以外にも多くの仕事をしています。一方腎臓になんらかの病気が生じ、腎臓機能の低下がある一定レベルに達すると、いくら治療を施しても後戻りができなくなってしまい、最終的には腎不全へと進行していきます。また、腎不全へと至らなくても腎機能障害が生ずると、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、あるいは閉塞性動脈硬化症のような心臓・血管疾患を引き起こしやすくなるといわれています。

 腎臓内科では、腎臓に何らかの疾患が生じた場合、多くの場合それは蛋白尿や血尿などの尿検査での異常としてとらえられますが、少しでも早く、そして正確に病態を把握し、適切な治療を行っていくことが大きな使命の一つです。そのために、私どもの施設では尿・血液検査、画像診断に加え腎生検を行い、的確に診断を進めております。また、腎機能低下が後戻りができない段階(ポイントオブノーリターン)に達してしまった患者様に対しては、少しでも機能低下を遅らせていくような治療と同時に、心臓・血管病変進展予防対策を講じてまいります。特に最近は糖尿病から腎機能が損なわれていくケースが多く、脂質の異常、高血圧、むくみ、そして心不全など様々な病態を合併してきます。そのような患者様に対しても病態に応じた治療を心がけています。

 しかしながら、治療を施しても腎機能低下が進んでしまう例も少なくなく、最終的には透析治療が必要となってしまった患者様に対しては血液透析や腹膜透析の導入を行っていきます(ただし腹膜透析の準備手術は他施設にお願いしています)。当施設では腎不全の治療として 透析治療が日本で産声を上げ始めた草創期以来、透析医療を行っており、スタッフ一同実に多くのことを患者様から学んでまいりました。そのことを私どもの財産として、患者様の身体的のみならず精神的苦痛を少しでも和らげ、そしてQOLを高めながら透析治療が継続できるように全力を尽くしてまいります。脳血管疾患などで身体機能が極度に低下された透析患者さまには、療養病床などで長期入院にも対応しながらリハビリテーションを行い、身体機能の向上、維持に努めております。

対象となる主な疾患

ネフローゼ症候群、各種腎炎、全身疾患に伴う二次性腎障害(糖尿病、高血圧、膠原病など)、急性および慢性腎不全、維持透析状態、ブラッドアクセストラブル、腹膜透析腹膜炎など

当院での治療内容

ネフローゼ症候群や活動性腎炎にたいするステロイド治療、免疫抑制剤治療
血液透析、血液濾過透析、LDL吸着はじめとするアフェレーシス治療、内シャント作成術および再建術、 経皮的血管形成術(PTA)など

糖尿病による腎症

 糖尿病になると様々な合併症をひきおこすことは周知のとおりです。心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症などの比較的大きな血管病変や、腎症、網膜症、神経症などの小さな血管病変による疾患が発症してくるのです。これらの疾患は高血糖のみならず、高血圧、脂質代謝異常、感染症などと複雑に絡み合い進行していくため、その管理には多方面からのアプローチが必要です。当院では糖尿病教室やフットケア等さまざまな形で患者さまにかかわっていき、少しでも合併症の進行を妨げられるように取り組んでまいります。

 合併症の一つである糖尿病性腎症は増加の一途をたどっており、透析治療が必要となる原因疾患として最も高率となっています。透析治療にまで至らなくても、糖尿病性腎症を一旦発症すると進行が止まらず、ネフローゼ症候群、全身の溢水状態、感染症や心・血管疾患の発症など、重篤かつ治療困難な状況に陥ってしまうことが知られています。当院では段階に応じた適切な治療を選択し、病勢の進行阻止に心がけています。

担当医紹介

松前 知治 (副院長)

副院長 松前 知治
昭和62年 福岡大学卒

専門分野

内科一般、腎臓内科、透析

資格・所属学会

  • 医学博士、総合内科専門医、腎臓専門医、透析専門医・指導医
  • 日本内科学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本高血圧学会、アメリカ糖尿病学会
コメント

症状のない尿異常が、将来腎不全や 心・血管疾患に結び付くことが少なくありません。当院では初期の腎炎(腎生検による 確定診断も行ってます)に対する治療から保存期腎不全管理 さらには透析治療をおこない、様々な程度の腎疾患を有する患者様に より添えるよう努めています。